公示地価、地方圏の住宅地が27年ぶりに上昇 低金利による需要下支え

毎日新聞2019年3月19日 17時12分(最終更新 3月19日 19時06分)

 国土交通省が19日発表した公示地価(今年1月1日時点)は、地方圏の住宅地が前年比0.2%上昇し、1992年以来27年ぶりにプラスに転じた。地方圏の商業地は1.0%上昇、全用途平均は0.4%上昇といずれも2年連続のプラスで、地方圏の地価回復が鮮明になった。一方、東京、大阪、名古屋の3大都市圏は上昇幅を広げ、景気回復と低金利を追い風に地価の上昇基調が続いている。

全国平均は住宅地が0.6%上昇で3年連続、商業地が2.8%上昇で4年連続のプラスを記録した。公示地価は2014年に3大都市圏の商業地などがプラスに転じ、緩やかに上昇してきたが、回復が遅れていた地方圏にも波及した格好だ。地方圏の住宅地の上昇について、国交省は「住宅ローン減税や日銀の低金利政策などの需要下支え効果もあり、交通利便性や住環境の優れた地域を中心に地価が回復した」と説明している。

https://mainichi.jp/articles/20190319/k00/00m/020/135000c

2019年の公示地価が発表されました。全国2万6000地点の標準地について,不動産鑑定士の評価をもとに,国土交通省が発表する今年1月1日時点の地価です。宅地の相続税路線価や固定資産評価額にも関わってくる価格ですので,毎年ニュースで大きく取り上げられています。

今年の公示地価は,下落が続いていた地方圏の住宅地について,バブル崩壊以来27年振りに地価が上昇したことがトピックとなっています。

東京,名古屋,大阪を中心とする三大都市圏の中心部や,札幌、仙台、広島、福岡といった地方の中枢都市の中心部では近年地価の上昇傾向が顕著でしたが,地価上昇のトレンドがその他の県庁所在地の都市部などに波及していったものと考えられます。

また,外国からの観光客の増加などの,インバウンド効果も大きく,今年も地価上昇率全国1位は,スキーリゾートのあるニセコエリア,倶知安町内の標準地でした(住宅地上昇率1位:倶知安-3; +50.0%,商業地上昇率1位:倶知安5-1; +58.8%)。さらに,商業地の地価上昇率2位が,外国人観光客に人気の高い,大阪市中央区の黒門市場内にある標準地(大阪中央5-24;+44.4%)であることからも,大きく地価が上昇している地域は,インバウンド効果の影響が多きことが裏付けられます。

もっとも,東京圏の中心部である都心5区などでは,地価の上昇も一段落した感があり,都心部では地価の潮目を迎えているものと考えられ,東京オリンピック後の需給状況も踏まえ,今後の動向について,しばらく注視してゆくべきと思われます。

また,地方圏でも,県庁所在地など都市部とそれ以外の格差は広がってきており,地方圏の住宅地が上昇したといっても,過疎地域を含む市町村など引き続き下落の続いている市町村も多くあり,地価の上昇した地域と,下落の止まらない地域の明暗が分かれてきています。

地価の下落は,固定資産税等の負担の減少,相続税等の減少にもつながることから,土地を保有するだけで売却を考えない方には,あながち悪いことばかりでもありません。しかし,土地の資産価値が低下するということは,家計の資産が少なくなり,将来の売却や,金融機関等から借入れをする際の担保評価の価値も下がるということですので,長い目で見れば経済的なマイナスは免れることはできません。

政府の発表やマスコミの報道では,どうしても単純化した内容が伝えられてしまいがちで,地方圏の土地需要が一気に高まっているかのような印象を持ってしまいますが,統計不正問題なども深刻化している現在,今回発表された公示地価についても,ある程度批判的に見たうえで,全体のトレンドとは別に,ご自身の居住あるいは保有される不動産のある地域の地価が,どのような傾向にあるのかをつぶさにご覧になることが必要と考えます。

(その2に続きます)