2017年5月30日施行の個人情報保護法の改正により,個人情報のなかでも,特にその取扱いについて配慮を要するものとして,「要配慮個人情報」(個人情報保護法2条3項)の規定が新設されました。

具体的には,①本人の人種,②信条,③社会的身分,④病歴,⑤犯罪の経歴,⑥犯罪により害を被った事実,⑦その他本人に対する不当な差別,偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報,が「要配慮個人情報」とされています。

なお,上記②の「信条」とは,法律的な意味としては,宗教的信仰や,主義・思想・世界観などを広く含むものと考えられています。

また,上記⑦の政令(個人情報保護法施行令)で定めるものとしては,

(ⅰ)身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む。)その他の個人情報保護委員会規則で定める心身の機能の障害があること。

(ⅱ)本人に対して医師その他医療に関連する職務に従事する者(医師等)により行われた疾病の予防及び早期発見のための健康診断その他の検査(健康診断等)の結果

(ⅲ)健康診断等の結果に基づき,又は疾病,負傷その他の心身の変化を理由として,本人に対して医師等により心身の状態の改善のための指導又は診療若しくは調剤が行われたこと。

(ⅳ)本人を被疑者又は被告人として,逮捕,捜索,差押え,勾留,公訴の提起その他の刑事事件に関する手続が行われたこと。

(ⅴ)本人を少年法3条1項に規定する少年又はその疑いのある者として,調査,観護の措置,審判,保護処分その他の少年の保護事件に関する手続が行われたこと。

このように,その人の宗教や政治的思想,病歴,犯罪歴など,差別・偏見の温床となるようなセンシティブ情報については,個人情報保護法は特に慎重に取扱いを行うべきことを規定しています。

具体的には,要配慮個人情報については,原則として,本人の事前同意を得ないで,取得してはならないこと(法17条2項) ,オプトアウト(同意なしに個人データを第三者提供する制度で,個人情報保護委員会への届出等一定の手続のもと認められる。)の対象にはならないこと,などが規定されています。
例えば,家族など本人以外の者から,本人の病歴を聞くことなども,本人があらかじめ同意していない限りは,原則として認められないことになります。

ただし,現実の必要性に配慮して,急病などの緊急時に際し,医師や看護師が家族から本人の病歴を聞く場合などは,事前同意なしに要配慮個人情報を取得することを認める,例外規定も設けられています。