個人情報とされる2つ目の類型,すなわち,
② 生存する個人に関する情報であって,個人識別符号が含まれるもの
とはどのようなものでしょうか。
個人識別符号を含むものが個人情報になることは,2017年5月30日施行の法改正で明確化されました。
その背景としては,マイナンバー制度の導入にともない,それを個人情報保護法上,どのように位置づけるかが検討されたことがあります。
前回,記号や番号,例えば携帯電話番号等の数字は,単にそれだけでは必ずしも個人を特定できないため,個人情報とはされませんが,それを台帳等で照合できる者(携帯電話会社など)にとっては個人情報となり得る,と述べました。つまり,記号や番号については,一般的には個人情報にはならなくでも,ある特定の者にとっては,個人情報となるという,相対的に決まり得るものもあるということです。
しかし,マイナンバーなど,通常,個人を識別できると考えられる記号,番号等については,政令(個人情報保護法施行令)や委員会規則(個人情報保護法施行規則)相対的に個人情報かどうかが決まるのではなく,一律に個人情報として保護していうという意図に基づいています。
では,施行令や施行規則で定められている個人識別符号とはどのようなものでしょうか。以下見ていきます。
【個人識別符号とは?】
① 特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した文字,番号,記号その他の符号であって,当該特定の個人を識別することができるもの(施行令1条1号イ~ト)
⇒指紋や目の虹彩,声の特徴などを,コンピュータなどで使用できるように「データ化」したもの(生体認証データなど)で,特定の個人を識別することができるものがあてはまります。
イ 細胞から採取されたデオキシリボ核酸(別名DNA)を構成する塩基の配列
→いわゆるDNAデータのこと
ロ 顔の骨格及び皮膚の色並びに目,鼻,口その他の顔の部位の位置及び形状によって定まる容貌
ハ 虹彩の表面の起伏により形成される線状の模様
(虹彩:黒目の内側で瞳孔より外側の部分)
ニ 発声の際の声帯の振動,声門の開閉並びに声道の形状及びその変化
ホ 歩行の際の姿勢及び両腕の動作,歩幅その他の歩行の態様
ヘ 手のひら又は手の甲若しくは指の皮下の静脈の分岐及び端点によって定まるその静脈の形状
ト 指紋又は掌紋
② 個人に提供される役務の利用若しくは個人に販売される商品の購入に関し割り当てられ,又は個人に発行されるカードその他の書類に記載され,若しくは電磁的方式により記録された文字,番号,記号その他の符号であって,その利用者若しくは購入者又は発行を受ける者ごとに異なるものとなるように割り当てられ,又は記載され,若しくは記録されることにより,特定の利用者若しくは購入者又は発行を受ける者を識別することができるもの(同条項2号)
⇒これは生体認証のような身体のデータではなく,マイナンバーをはじめとする番号,記号等の符号です。
イ 旅券(パスポート)の番号(施行令1条2号)
ロ 基礎年金番号(施行令1条3号)
ハ 運転免許証の番号(施行令1条4号)
ニ 住民票コード(施行令1条5号)
ホ 個人番号(マイナンバー)(施行令1条6号)
ヘ 国民健康保険の被保険者証の記号・番号・保険者番号(施行令1条7号イ,施行規則3条1号)
ト 高齢者医療の被保険者証の番号・保険者番号(施行令1条7号ロ,施行規則3条2号)
チ 介護保険の被保険者証の番号・保険者番号(施行令1条7号ハ,施行規則3条2号)
リ 個人情報保護委員会規則で定める文字,番号,記号その他の符号
具体的には,以下のようなものが列挙されています
・健康保険の被保険者証の記号,番号及び保険者番号, 健康保険の高齢受給者証の記号,番号及び保険者番号
・船員保険の被保険者証の記号,番号及び保険者番号,船員保険の高齢受給者証の記号,番号及び保険者番号
・旅券(日本国政府の発行したものを除く。)の番号
・在留カードの番号
・私立学校教職員共済の加入者証の加入者番号,私立学校教職員共済の加入者被扶養者証の加入者番号,私立学校教職員共済の高齢受給者証の加入者番号
・国民健康保険の高齢受給者証の記号,番号及び保険者番号
・国家公務員共済組合の組合員証の記号,番号及び保険者番号,国家公務員共済組合の組合員被扶養者証の記号,番号及び保険者番号,国家公務員共済組合の高齢受給者証の記号,番号及び保険者番号,国家公務員共済組合の船員組合員証及び船員組合員被扶養者証の記号,番号及び保険者番号
・地方公務員等共済組合の記号,番号及び保険者番号,地方公務員等共済組合の組合員被扶養者証の記号,番号及び保険者番号,地方公務員等共済組合の高齢受給者証の記号,番号及び保険者番号,地方公務員等共済組合の船員組合員証及び船員組合員被扶養者証の記号,番号及び保険者番号
・雇用保険の雇用保険被保険者証の被保険者番号
・特別永住者証明書の番号
なお,個人の携帯電話番号やクレジットカード番号それ自体は,個人識別符号には当たらないとされています。
ただし,前述のとおり,携帯電話会社やクレジットカード会社にとっては,氏名と照合可能と考えられるため,個人情報には当たり得ることになります。