前回は,外国の裁判所の判決が,日本国内でどのように扱われるか,について,

民事訴訟法118条各号によれば,外国裁判所の確定判決であることに加え,

①法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること,

②敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと,

③判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと,

④相互の保証があること,

の4つすべての要件にあてはまる場合,外国の判決が日本でも承認され有効となると述べました。

では,前回の続きとして,民事訴訟法118条の要件②~④についてみてみます。

②は被告が外国の裁判所から正式に書類の送達を受けているか,または被告が外国の裁判に応訴する(主張を書いた書面を提出する)など,ちゃんと反論の機会を与えられていたかという問題です。
外国で知らない間に勝手に訴訟が進められ,何も反論する機会がないまま判決が出されているのに,その判決をそのまま日本国内で有効としてしまうのは,被告にとって酷であるということによります。

③は,判決の内容及び訴訟手続が日本の公序良俗に反しないか,日本の社会で受け入れられる内容かということです。
例えば,仮に「殺人を請け負った契約について,ちゃんと殺人を行ったのだからその代金を支払え」,といったような内容の外国判決がなされたとしても(そんな判決を出す国はないと思いますが),その契約の内容は日本の公序良俗に反するので受け容れられない,そんな判決の効力は認められません,ということです。

④は,我が国と同等の条件(ここで説明している民訴法118条①~④の要件と重要な点で異ならないような条件)で,我が国の判決が外国(その判決を出した国)で承認されることが保証されていることです。
日本の判決についても,同じような要件で承認し,有効としてくれるような外国については,その国の裁判所の判決について,国内での効力を認めていいでしょう,ということです。

ですので,外国で離婚訴訟を起こされても,例えば,被告となる相手である夫や妻が全くあずかり知らないところで勝手に外国の裁判所が離婚を認める判決をしたという場合には,上記の②の要件が欠けていますので,日本国内では効力が認められない,離婚届は受理されないということになります。

ただし,外国の裁判所から正式な書類の送達がなくても,電話やメールなどで裁判の日程を知らされ,裁判期日に出席して主張を述べたり,裁判所に反論の書面を送ったりすれば,②の要件がみたされることになります。

なお,外国の判決が全くあずかり知らないところで出された場合,その判決は日本国内では無効になりますが,離婚届を受け付ける日本の市役所等の役所は,その判決が無効であるかどうかが分かりませんので,日本国内で,その外国判決の無効確認訴訟等を起こして,日本での効力がないことを明らかにしておく必要があります。