【パワハラの類型】

パワハラと言われる行為にどのようなものがあるか?については,一般的に,以下の6つの類型があるとされています。 この類型も,どのような行為がパワハラに当たるかのチェック,どのようなことを行ってはならないのかの共通認識を持つ際に役立ちます。

1 身体的な攻撃(暴行・傷害)
  殴る・蹴るの暴力をふるう,物を投げつける,机を叩くなど

2 精神的な攻撃(脅迫,名誉毀損。侮辱,暴言,嫌味を言い続ける等)  
  みんなの前で大声で叱責する,人格を否定するような発言をするなど

3 人間関係からの引き離し(隔離,無視,仲間外れ)
  別室閑職への隔離,あからさまに無視をする,職場内で1人だけ連絡事項を伝えないなど

4 過大な要求(業務上およそ遂行不可能なことの強制,仕事の妨害)  
  休日出勤してもおよそ終わらない仕事量を割り振る,就業時間終了直前に大量の仕事を毎回押し付けるなど

5 過小な要求(仕事を与えない,能力・経験とおよそかけ離れた仕事を命じる)
  課長をさしたる理由もなく突然草むしり業務に降格する,営業職にあるのに倉庫整理を毎日強要されるなど

6 個の侵害(私的なことに過度に立ち入る,集団で1人に対して監視をするなど)  
  個人の信条・宗教などをみんなの前で公表し悪口を言うなど,個人の携帯電話を盗み見するなど

【ハラスメントの判断基準はあくまで被害者】

前回述べたとおり,精神的・身体的苦痛を与えたか否かの基準は,あくまで被害者の立場に立って判断されます。一般的には,平均的な労働者がどう感じるか?が判断基準として重要です。 そして,苦痛を感じるということに合理性・妥当性があるかどうか?は,「現代の常識・社会通念」によって判断されます。

この点,自分の価値観と,平均的な労働者の価値観とされるものの相違については,十分な注意が必要です。
常識と思われるものは,時代とともに変化しているからです。 例えば,以前でしたら,「歩きタバコの何が悪い?!」と開き直る方もいらっしゃったかもしれませんが,現在では多くの自治体で「路上喫煙防止条例」が制定され,歩きタバコは法的に禁止されています。

【ハラスメントの防止~感情管理】

「職場の運営上あるべきではない言動(発言と行動)」には特に注意が必要です。 飲み会などの誘い,いわゆる「飲みニュケーション」も繰り返し執拗に行うとパワハラになり得ます。飲み会への参加は職場の運営上必須とまではいえないからです。
明石市長の辞職問題に関連して,いわゆる「やり手」の上司ほど,パワハラを行ってしまいやすいということを述べましたが,他者への発言・叱責を行う前に,少し振り返りの時間を置いていただくことが重要と思われます。
業務上必要でかつ適正な範囲を超えない指示,注意,指導等は,たとえ相手が不満を感じたりしてもパワー・ハラスメントにはならないのですから,これから自分がする発言は,業務の適正な範囲に含まれるか?ということを少し考えることが非常に重要です。

人間は自分のすべての感情,理性をコントロールすることは不可能です。モラル・ハラスメントなどは典型ですが,一般に無意識のうちにも,ハラスメント(嫌がらせ)行為は行われると考えられます(加害者の「悪気はなかった。」という,言い訳の多くが認められないのはそのためです。)。

自分のしようとする発言には,自分の不快な感情のはけ口や,自分のストレス発散のための発言が混ざっていないか? 相手の人格を否定するだけの言葉が入っていないか? これらについて少しの時間振り返っていただくだけでも,パワハラの防止,感情管理につながります。

(その4に続きます)