明石市長が市職員への暴言を理由に辞職しました。道路拡幅事業のための不動産買収交渉の遅れに関し,部下を激しく叱責した際,市長として許されない発言,パワー・ハラスメント(パワハラ)があったことが大問題になりました。
神戸新聞NEXT 2019/1/29 12:03
部下に「辞表出しても許さんぞ」「自分の家売れ」 明石市長の暴言詳報
「市長『すまんですむか。立ち退きさせてこい、お前らで。きょう火付けてこい。燃やしてしまえ。ふざけんな。今から建物壊してこい。損害賠償を個人で負え。安全対策でしょうが。はよせーよ。誰や、現場の責任者は』」
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201901/0012019280.shtml
記者会見で,市長は辞職の理由について,「自分の感情をコントロールできず,激高することそのものが,リーダーとして資質を欠いているのは明らかです。」と述べています。
子育て・福祉行政などでは手腕を発揮し,明石市の人口増加など,着実に成果を残してきた市長だけに,このような暴言を発していたこと,それによる突然の辞任に市民も戸惑いが隠せないと思います。
この点,現在の社会常識,社会のルールとしては,どれだけ成果を上げている人であっても,職場におけるパワハラ,セクハラなどのハラスメント行為は許容されるものではなくなってきています。
たとえ部下の成長のためと本人が思っていたとても,「しごき」や過度に「ハッパを掛ける」といったことは,許される時代ではありません。
昔の学校では,炎天下のクラブ活動でも,「練習中に水を飲むな!」という指導が普通にされていました。私も35度超の猛暑の中,こっそり水を飲んでいるのが見つかって怒られた覚えがあります。しかし,現在,そんな指導をして事故が起きたら,学校や指導者は厳しく責任を追及され,大変なことになります。
社会常識は時代によって大きく変わっていること,昔は許されていた行為が今は許されなくなっている,という認識が必要です。
また,パーソナリティの問題として,市長は,「自分の感情をコントロールできず,激高することそのものが,リーダーとして資質を欠いている」と反省の弁を述べていますが,特に,いわゆる「やり手」型の上司には,「自分にできることは他人にもできるはず。」と思い込み,「なぜこんなこともできないのか!」と周囲に対して,激高してしまう傾向があるので要注意です。
「職場管理」には,業務・作業工程の管理,業績達成や労務管理のみならず,怒りの感情を制御するアンガーコントロール,いじめ防止なども含めた「感情管理」も欠かせない時代になっています。
増加の一途をたどっているパワハラ問題に対し,厚生労働省も,以下の記事のように,今通常国会に,パワハラ防止策についての法案提出を予定しています。
日経新聞電子版2018/11/19 15:16
パワハラ防止策、企業に義務化 厚労省が方針公表
「厚生労働省は19日、労働政策審議会を開きパワーハラスメント(パワハラ)の防止策を企業に義務づける法制化の方針を示した。指針でパワハラの定義や企業に求める具体的な対応を盛りこむ。2019年の通常国会に改正法案を提出する方針だ。不本意な退職などを防ぎ、働きやすい環境を整える。」
「パワハラの定義は(1)優越的な関係に基づく(2)業務上、必要な範囲を超える(3)身体的・精神的な苦痛を与える――を3つ満たすものとした。企業は防止策として、被害者のプライバシー保護や対処策を就業規定に盛りこむことなどが義務になる。」
とはいえ,従業員教育や人材育成の一環として,管理職や指導者は,時には厳しい言葉で注意をしたり,困難な業務と分かっていながらも指示せざるを得ない状況があるのも実情です。実際,パワハラについては,そのような難しさ,必要な指導とパワハラの間にグレーゾーンがあるため,これまでは法制化が難しいと考えられてきました。
しかし時代は変わりました。いよいよパワハラ防止が法制化される時代には,どのような行為がパワハラに当たるのか?といった判断基準などについて,管理職のみならず,組織のメンバー全員が共通認識を持っておくことが重要になります。
(その2に続きます)