特別養子、対象15歳未満に 小中学生も、法制審要綱案 審判2段階、実親関与制限 共同通信社2019年01月30日
「法制審議会(法相の諮問機関)の部会は29日、実の親が育てられない子どものための特別養子縁組制度について、現行では原則6歳未満の対象年齢を、小中学生が含まれる15歳未満に引き上げる民法改正要綱案をまとめた。家庭裁判所の審判で縁組が成立するまで、実親がいつでも縁組の同意を撤回できる現行手続きも改定。審判を2段階に分け、第2段階では実親に関与させない。」

「審判は(1)実親の同意や虐待の有無など、当該の子どもの縁組が必要かどうかを審理(2)養親となる人がふさわしいかどうかを審理―の2段階に分ける。実親は第1段階で縁組に同意して2週間経過した後は撤回できず、第2段階に関与できない。 現行制度では実親は縁組成立まで同意をいつでも撤回できるため、子どもや養親の精神的負担が重いとの指摘があった。 実親が虐待をしていた場合は同意がなくても縁組できるが、現行では縁組成立の直前まで、その判断が難しいケースがあった。要綱案では第1段階で判断されることになる。 児童相談所の所長が第1段階の審判を申し立てることができる規定も盛り込んだ。養親となる人が申し立てた審判でも、所長は手続きに参加して子どもや実親の状況の立証を手助けできる。」

特別養子縁組制度法改正の続報です。家庭裁判所の審判を2段階に分け,実親からの縁組撤回を制限することによって,実親からの虐待などがあったケースについて,特別養子縁組の審判を進行させやすくするようです。また,児童相談所の所長が審判を申し出ることができることとしたのも,そのようなケースに対応したものと思われます。

では,特別養子縁組の要件が,現行法でどうなっているかみてみましょう。

【特別養子縁組の要件】

1 養子の年齢(民法第817条の5)
養子になる子どもの年齢は,養親となる者が家庭裁判所に審判を請求するときに6歳未満である必要があります。ただし,子どもが6歳に達する前から養親となる者に監護されていた場合には,8歳に達する前までは,家庭裁判所に審判を請求して,特別養子縁組を求めることができます。
このような要件が定められていたのは,幼児期(小学校就学以前)が,実の親子と同様の関係を作るのにふさわしいと考えられていたからです。しかし,この点について,より多くの子どもが特別養子縁組の恩恵を受けられるよう,今通常国会に,特別養子の年齢制限を緩和する民法改正案が提出される予定になっています。

2 養親の年齢と夫婦共同縁組(民法第817条の3・4)
養親となるには配偶者のいる夫婦でなければならず,夫婦共同で縁組をすることになります。普通の養子は,父のみまたは母のみと養子縁組ができますが,特別養子縁組では認められません。もっとも,夫婦の一方の嫡出子を他方が養子にする場合(いわゆる連れ子である実子を特別養子にする場合)には一方のみの縁組で可能です。 また,原則として養親は25歳以上でなければなりません。
ただし,養親となる夫婦の一方が25歳以上である場合,もう一方は20歳以上であれば養親となることができます。 これらは,子どもの生育環境や実の親子と同様の関係を形成するための配慮とされています。
なお,特別養子をあっせんする団体等の現在の運用では,養親は50歳未満の方が望ましいとされているようです。養子の年齢制限の緩和に伴い,この点も運用に変更があるのかは今後を見守りたいところです。

3 実父母の同意(民法第817条の6)
特別養子縁組は,養子となる子どもの父母(実父母)との親子関係を終了させるので,実父母の同意が必要です。ただし,実父母がその意思を表示できない場合や,実父母による虐待,悪意の遺棄その他養子となる子どもの利益を著しく害する事由がある場合には,実父母の同意が不要となることがあります。

4 6カ月間の試験監護(民法第817条の8)
縁組成立のためには,養親となる者が養子となる子どもを6ヵ月以上監護していることが必要です。そのため,縁組成立前にお子さんと一緒に暮らし,その監護状況等を考慮して,家庭裁判所が特別養子縁組の成立を決定することになります。

特別養子縁組の要件については,より多くの子どもが特別養子縁組の恩恵を受けられるよう,特に年齢の要件を緩和し,「小中学生も対象とすべきだ」という指摘が出ていました。一方,対象年齢を引き上げると養親との良好な関係を築くのが難しくなるとの意見もあり,法制審の部会で検討が続けられていました。

1月29日の部会では,民法上,「本人の意思が尊重される年齢」(普通養子については15歳以上であれば自らの意思で縁組ができるとされています。)とされる15歳を区切りにすべきだと結論づけられたとのことです。

少子高齢化,晩婚化,低成長による家計の苦境など,社会をめぐる情勢は特別養子縁組が導入された1987年当時からも,大きく変わってきています。子どもを育てられない夫婦と子供を持つことができない夫婦双方を社会的に支援し,多くの子どもに明るい生育環境を確保する方向に進んでもらいたいと思います。今後の法案提出を見守りたいところです。

厚生労働省HPには,特別養子縁組のあっせん団体の連絡先等も記載されています。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169158.html