ここで,公示地価がどのように判定され,公表されているかについて簡単に見ておきます。公示地価は,地価公示法という法律に基づき,国土交通省に置かれた土地鑑定委員会(定数7名の審議会)が選定した,全国2万6000地点の1月1日時点の地価について,1地点につき不動産鑑定士2名による評価をもとにしています。

土地の上に建物が建っていても,それはないものとして,あくまで土地(更地)の評価額を判定します(鑑定評価の専門用語では,独立鑑定評価といいます。)。

各都道府県単位で,地価公示に関する作業を取りまとめる代表幹事(地域に精通したベテランの不動産鑑定士が務めることが多いです)が置かれ,各都道府県内では,作業単位として,いくつかの市町村をひとまとめにしたブロック(分科会)に分かれ,各分科会の中で,分科会の幹事を中心に評価方針,作業日程,評価額の妥当性の検討などが進められてゆきます。

地価の高低は,一般的には,地図の等高線のように,バランスを保ちながら分布していることが通常ですから,各標準地を担当する不動産鑑定士の評価をもとにしつつ,分科会内,さらには都道府県内の標準地相互間の評価額についてバランスが取れているかを,取引事例や不動産業者等からのヒアリングなども考慮して分析し,地域内の標準地の価格を検討してゆきます。

もちろん,様々な要因で,ある1地点の価格のみが,周辺から突出して上昇・下落することもあり得ますが,その場合には,なぜそこが突出した数値になったのかを,担当の不動産鑑定士や幹事がデータの裏付けとともに十分説明できるよう検討しておくことになります。

このような作業をもとに,各都道府県の代表幹事がとりまとめた標準地の価格を,国土交通省の土地鑑定委員会が審査・判定し,公表することになっています。

なお,国土交通省の土地・建設産業局地価調査課には,鑑定官という専門の官職が7名置かれており,各都道府県の代表幹事を中心に評価方針などについて実務的な連絡をとりつつ,公示地価の作業が進められています。

こうした作業の積み重ねによって,公示地価が判定・公表されていることからすれば,全国トップクラスの上昇率として公表されているような地点の周辺地域は,相当程度のデータの裏付けがあり,実際にもかなり需給がひっ迫しているのだろうということが窺えます。公示地価の動向は,相続税路線価や固定資産税評価額にも影響してきますので,価格の急激な変化については,実際に記者会見等で,詳しい説明が求められることもあります。

むしろ,生き馬の目を抜く世界である不動産取引の実勢価格では,公示地価を超える上昇率になっているのではないかとも考えられます。

このあたりは,皆様が実際に公示地価を判定し,公表する立場になったことを想像していただければ,公示地価のデータからいろいろなことが見えてくるのではないかと思います。

今年の全国の公示地価の詳細については,国土交通省の以下のサイトで参照できます。

https://www.land.mlit.go.jp/landPrice/AriaServlet?MOD=2&TYP=0

(その4に続きます)