日本経済新聞電子版より2019/1/27 1:30 

「高水準だった国内の不動産売買に減速感がでている。2018年7~12月の取引額は1兆7290億円と前年同期に比べ34%減った。半期の取引額としては6年ぶりの低水準だ。これまで欧米市場などに比べ値ごろ感があると積極的だった海外勢が購入を控え始めた。潤沢な世界のマネーが日本の不動産市場にも流れ込む構図に変化がみられる。」

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40533640W9A120C1MM8000/

国内の不動産市況についての記事です。

不動産価格を見る際,どれだけのお金が不動産業に回っているかが重要な指標になりますが,国内銀行の不動産業に対する新規貸出額は,下記の記事を追っていくと分かりますように,2016年の12兆2800億円をピークに減少傾向にあります。

日本経済新聞電子版より2017/2/10 0:57

不動産融資最高 12兆円 16年15%増,節税アパートなどで活況

「日銀が9日発表した『貸出先別貸出金』によると,2016年の金融機関による不動産融資は前年を15.2%上回る12兆2806億円だった。統計を遡れる1977年以来で過去最高だ。地価上昇で不動産投資信託(REIT)向け融資などが増えた。『バブル』といえるような状況にはないものの,節税を目指したアパートの過剰建設などひずみも広がる。金融庁や日銀は少し警戒のレベルを引き上げている。

https://www.nikkei.com/article/DGXLASGF09H0N_Z00C17A2EA2000/

日本経済新聞電子版より2018/2/8 19:18

17年の不動産融資,6年ぶり減少 アパートローン失速

「低金利下で伸びてきた不動産融資が鈍っている。日銀は8日,全国の銀行による2017年の新規融資額が11兆7143億円と,前年比5.2%減ったと発表した。前年を下回ったのは11年以来6年ぶり。日銀が13年に大規模な金融緩和に踏み切って以来初めてだ。16年はマイナス金利を踏まえ融資増となったが,アパートの過剰建設などゆがみが目立ち,銀行が慎重姿勢に転じた。」

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2669477008022018EE8000/

国内銀行からの新規貸出額をみる限り,2016年をピークに不動産市況の潮目が変わってきていることが分かります。

不動産市況が活況になると,銀行からの貸し出しも活発になるわけですが,安心して融資できる一等地の物件,間違いない不動産への融資が一通り終わると,だんだん採算性のよくない物件,担保価値の劣る不動産への融資申し込みが増えてきます。そうすると,銀行としても融資の判断を躊躇したり,融資額を減らさざるを得ないことになってきます。

不動産向けの融資は,過去30年ほどをみる限り,10年単位で呼吸をするように,大きなサイクルで動いてきているようです。

不動産市場に流れ込む資金が減少すれば,それだけ地価も下落する方向に動きます。不動産市況は国内の景気動向を大きく左右する重要なものなので,慎重な見極めが必要です。

2010年代後半は,日銀によるJ-REIT(不動産投資信託)投資口の買い入れや,東京オリンピックに伴う首都圏を中心とする活況など,特殊な要素もあり,不動産市況の先行き予測には難しいものがあります。しかし,国内銀行の新規貸出額にみるように,潮目が変わってきているのは確かですので,今後,海外投資家からのマネー流入も減少が続くのか,今後1~2年は特に注視すべきと感じます。