不動産鑑定士は,国家資格である不動産鑑定士試験に合格し,国土交通省に登録をしている有資格者です。
不動産(土地・建物等)の価格評価,賃料評価,不動産の調査についての専門家であり,また,不動産利用についてのコンサルティングの専門家でもあります。
テレビのニュースなどでも,不動産の価格について意見を求められるのは不動産鑑定士が多いです。最近でも,南青山の児童相談所に関する騒動に関し,テレビで「児童相談所ができたからといって周辺の地価が下がるといった話は聞いたことがない。」とコメントしていたのは東京の不動産鑑定士の方でした。
弁護士,公認会計士とあわせて,文系三大国家資格と呼ばれることもありまが,日本三大祭りなど,三大○○の3つめはしばしば変わるように,人によっては不動産鑑定士を三大資格から外すこともままあります・・・

現在の登録者数は全国で約8300人,平成30年の不動産鑑定士試験は,第一関門である短答式試験の申込者が1751人,最終合格者が117人となっています。
不動産鑑定士試験は,短答式試験・論文式試験の2段階で実施され,試験科目は,a鑑定理論(筆記及び電卓を使った演習),b行政法規(都市計画法,建築基準法など),c民法,d経済学,e会計学の5科目で,短答試験(マークシート)が1日,論文試験は3日間にわたって行われます。
試験に合格してからは,1年間実務補習を行い,その後最終試験をクリアすれば,不動産鑑定士として登録ができます。なかなか合格・登録まで長い道のりを要する資格です。

不動産鑑定士の仕事は,不動産の価格や賃料の評価が中心で,具体的には,以下のような仕事をしています。比較的地味な仕事かもしれませんが,重要な活動を行っています。

a公的部門(役所関係)の不動産評価
○国が公表する「地価公示」や「地価調査」の標準地・基準地評価 
 地価を公表し,適正な土地取引を実現するため,国・都道府県から委託を受けて,基準となる宅地の不動産の評価をしています。
○相続税路線価の標準地の評価,固定資産税の標準宅地の評価
 課税の基準となる地価の評価をしています。
○公共用地の取得、土地区画整理・再開発等
 道路や鉄道の建設,公園整備や文化財保存のため,土地を買収することが必要となる場合に,適正な価格で買い取りを行えるよう,不動産鑑定士が委託を受けて鑑定評価を行っています。

b民間部門の不動産評価
○不動産信託(REIT)に組み入れる物件や,私募ファンドのポートフォリオ(組入れ物件)の鑑定評価
 不動産を証券化し,株式のように,一般の投資家に証券(投資口)を販売するような場合には,適正価格で物件を売買することが保証されるよう,不動産鑑定士による評価が行われています。
○不動産事業評価,担保評価
 金融機関が不動産事業に対して,また,不動産を担保に貸付を行う際,複雑な案件については,金融機関内部の評価だけでなく,不動産鑑定士の評価を得ることによって,公正かつ慎重な判断を行うということがなされています。
○破産・民事再生,任意売却に際しての評価
 破産や民事再生などの局面で,債権者を害することなく,公正な価格で不動産を処分したことが説明できるよう,不動産鑑定士が評価を行うことがあります。
○売買,相続,現物出資,合併,減損会計等に関する評価,
 特に,親族間や関連会社間の不動産売買について,税務署や関係者に,公正な価格で取引をしたことを説明することが必要な場合に,不動産鑑定士が評価を行っています。また,会社へ不動産を現物出資する場合,企業の合併でそれぞれの不動産の価値を明らかにする必要がある場合,減損会計を行う場合などについても,不動産鑑定士の評価が必要となる場合があります。
○賃料設定・賃料増減の紛争
 新しく不動産の賃貸借を行う場合,不動産の賃料(地代・家賃)をいくらに設定すればよいか分からない場合や,現在賃貸借されている不動産の賃料の変更(増減額)について争いがある場合などに,不動産鑑定士が賃料の評価を行う場合があります。

③裁判部門での不動産評価
 訴訟や調停など,裁判所で紛争を解決する場合,不動産の鑑定評価によって,土地建物の価値が判断されることがあります。例えば,相続財産の遺産分割に際して土地建物の評価額に争いがある場合,離婚の財産分与に際して土地建物の評価額に争いがある場合,賃料の改定に際し増減額に争いがある場合などが典型です。
また,競売物件の評価も不動産鑑定士が評価人となっています。