【不動産価格についての情報源は?(その2)】
不動産価格の情報についての話に戻ります。第3は,固定資産税評価額についてです。

3 固定資産税評価額・固定資産税路線価
市町村が作成している,固定資産税算定の際の,土地価格評価の基準となるデータです。毎年1月1日現在の固定資産税評価額について,4月以降に公表されています。
不動産をお持ちの方は,毎年4月から6月の間に,固定資産納税通知書が送られてくるはずです。その中に「評価額」として記載されている金額をご覧になったことがあるのではないでしょうか。それが固定資産評価額です。仮に納税通知書が手元になくても,所有者本人は市町村の固定資産税課などで,固定資産評価証明書を入手することができます。
固定資産評価額は,1つ1つの土地建物について市町村が評価したものですので,よりダイレクトに個別の不動産の評価額が示されています。
不動産登記や不動産関連の訴訟などに際しては,この固定資産評価額をもとに,手数料として貼付する収入印紙の額などが決まるので,公的にも重要な評価額です。
なお,国税(相続税)路線価が敷設されていない地域については,この固定資産評価額をもとに,相続税額の計算がなされることになります(その場合,どのような仕組みで計算されるかについては少々複雑ですので,別の機会に述べたいと思います)。

固定資産評価額は,通常,土地所有者のみに知らされるものですが,固定資産課税台帳の縦覧期間内(毎年4月頃に設定されていることが多いです)は,他人が所有する不動産の固定資産評価額も閲覧することができます。近所の土地に比べ,自分の土地だけ異様に固定資産税が高いのでは?といった疑問がある場合には,固定資産課税台帳の縦覧に行かれ,周辺の土地の固定資産税評価額の単価と比べてみるとよいと思います。
固定資産評価についても,国税(相続税路線価)と同様,道路に路線価が敷設されています。この固定資産税路線価も,全国地価マップで簡単に見ることができます。
https://www.chikamap.jp/chikamap/Portal?mid=216
固定資産税路線価でも,地図上の道路(路線)に,矢印とともに,「100000」「200000」といった数値が記載されています。これは1㎡当たりの単価で。そのままの値です(「100000」と記載されていれば,1㎡あたり10万円と評価されることになります。これらの単価に土地の面積を掛ければ,固定資産税評価における土地の評価額が分かります。実際には,国税(相続税)路線価と同様,土地の形や大きさによって,補正したうえで,評価額を計算することとなります。
なお,国税(相続税)路線価にあった,借地権割合の記載はありません。固定資産税はあくまで土地建物の所有者のみに課せられるものだからです。

固定資産税路線価についても,評価の標準となる宅地は,3年に1度,不動産鑑定士が委託を受けて評価し(「評価替え」といいます。),そのうえで市町村(または市町村から委託を受けた業者)が各道路にバランスをとりながら路線価を設定しています。最近では平成30年(2018年)に評価替えがあり,次回は3年後の実施となります。3年に1回とされているのは,固定資産税評価の基準となる宅地は全国40万地点とかなり多く,さらに,基準となる宅地の評価額をもとにして,都市部のみならず農村部まで,くまなくすべての土地について評価額を決定しなければならないため,事務量があまりに膨大になるためと考えられます。
なお,バブル期以降は,地価の乱高下にも対応できるよう,評価替えではない年度にも,地価の変動率を反映させた時点修正という形で,毎年,固定資産税評価額を地価動向に即して調整している市町村が多いようです。

固定資産税評価額,固定資産税路線価に表示された価格について注意していただきたい点としては,固定資産税評価額は,原則,鑑定評価額(≒時価)の70%に設定されることとされています(評価替えの3年の間に地価が上昇するなどして,路線価の額が時価を上回り,違法な課税とならないようにという配慮のため。3年に1回の評価のため,国税(相続税)路線価よりもさらに控えめに,70%評価とされています。)。
ですので,固定資産税評価額から,土地の時価を知りたい,という場合には,固定資産税評価額を0.7で割り戻すこと,例えば路線価が1㎡当たり7万円とされている場合には,これを0.7で割った10万円を時価の目安とするということも一般的に行われています。
(その3に続きます)