前回まで述べてきたように,所有者不明土地の増大を防ぐため,法務省において,民法(物権法)・不動産登記法等の改正の検討が進められています。

この法改正は,直接的には,所有者不明土地の問題がきっかけとなっていますが,大きな流れで見れば,近年の民法改正(いわゆる債権法改正や相続法改正)の流れをくむものです。

これまでの一連の民法の見直しに関し,次は,所有権のあり方や共有といったことについて規定している法律である,民法のなかの物権分野(物権法)について改正を検討しようという動きになっています。

具体的には,法務省の発表でも示されているように,以下のような事柄が検討されるようです。

1 相続登記を義務化すること

 現在は相続があったときに名義変更を行う相続登記は任意とされ,登記するかどうかは相続人の判断に任せられていますが,これを義務化するということです。

 ただし,どの程度の罰則が設けられるか,どこまで強制力をもたせられるかはまだ決まっていませんので,実効性の確保が課題となりそうです。

2 遺産分割協議の期間に制限を設けること

 遺産分けの話し合い(遺産分割協議)についても,相続税の申告期限(被相続人の死亡を知った日から10か月以内)はありますが,民法や不動産登記法上の期限はありません。そのため,相続税のかからない場合などには,遺産分割協議がなされない例も多く見られます。

 これを改め,遺産分割協議に期間制限を設けることが検討されます。報道によれば,話し合いでの合意や家庭裁判所への調停申し立てがされないまま,被相続人が亡くなって一定期間が過ぎれば,法律に従って自動的に権利が決まるようにする,期間は3年,5年,10年の複数案があるとのことです。

 しかし,これについても,どこまでの強制力をもたせられるか,実効性の確保が課題です。

3 土地の所有権を放棄できる制度を検討すること

 これは,平たくいえば「要らない土地を捨てる。」ことを可能にするということです。

 これまでは考えられなかったことですが,例えば,親の出身地にある遠く離れた土地で管理も処分も難しいような土地=ある人たちにとって要らない土地を,他の人たちや地元の役所などが有効活用してゆくためには,このような発想の転換も求められることになります。

 これについては,放棄を認める条件や,第三者機関や自治体など,放棄された土地の受け皿となる機関をどうするかが問題になります。土地を管理するにも費用や労力がかかりますし,例えば土壌汚染のある土地などは受け皿があるのか?といった問題がありますから,どのような条件で,誰が放棄された土地を取得し,管理するのかが重要です。

4 共有地の管理をやり易くすること

 共有地の管理について,現在の民法の規定を明確化したり,より管理がやり易くなるように改正をするということです。

5 土地ごとに相続財産管理人を選任できるようにする。

 これまでは,相続財産管理人(相続人がいない場合に,相続財産を管理や換価するために裁判所から選任される人,通常は弁護士が選任される。)が置かれる場合,人単位で選任(亡くなった方の財産について1人が選任。)されていましたが,これを土地を単位として選任することができるようにするということです。

そのほか,土地所有者の負う責務を明文で規定したり,隣接地との関係など相隣関係を現代化することなども検討される可能性があります。

今後も,民法(物権法)・不動産登記法の改正についての続報があれば,紹介してまいりたいと思います。