定期建物賃貸借契約(定期借家契約)について,契約期間の途中で解約することはできるのでしょうか。
まず,借家人からの解約申入れについて述べます。
【原則:中途解約はできない】
前提として,「期間の定めがある」借家契約に関しては,普通の借家契約であるか,定期借家契約であるかを問わず,原則,契約期間の途中に解約はできないこととされています。
この点,誤解されている方も多いかもしれませんが,解約の申入れができるという規定が民法・借地借家法に置かれているのは,借家契約に契約期間を定めなかった場合についてです。
【例外:中途解約ができる場合もある】
1 特約がある場合
ただし,借家契約に,借家人から中途解約ができるという条項(解約権留保特約)が置かれている場合には,その条項の定めにしたがって,中途解約ができることになります。
2 合意できた場合
また,大家さんと借家人の方が合意した場合には,双方が納得しているのですから,特約がなくとも中途解約ができます。
3 借地借家法の例外規定に当てはまる場合
もっとも,普通の借家契約と異なり,定期借家契約は,一定期間は空室にならないよう居住してもらいたいという観点から,中途解約ができるという条項(解約権留保特約)は置かれないことが多いのが実情です。
それでも,定期借家契約について,急な転勤など,やむを得ない事情で借家人から中途解約したいという場合も生じ得ます。そこで,借地借家法は,例外として,定期借家契約について,中途解約の特約がなくても借家人が解約できる場合を規定しています。
借家人から中途解約ができる条件は,
ⅰ居住用の建物を借りていること(借りている建物の一部が居住用という場合も含みます)
ⅱ借りている部分の床面積が200㎡未満であること
ⅲ転勤,療養,親族の介護その他のやむを得ない事情により,借家人が引き続き使用することが困難となったこと
の3つをみたすことです。
これらをみたす場合,借家契約は,借家人が解約を申入れた日から1か月経った時点で終了します(借地借家法38条5項)。
さらに,これらの規定に反する特約で,借家人に不利なものは、無効とされています。つまり,「どのような事情があったとしても,借家人からの中途解約は一切できない。」といった特約が定期借家契約に置かれたとしても,そのような特約は無効となるということです(借地借家法38条6項)。
なお,上記ⅲの「やむを得ない事情」の「転勤,療養,親族の介護」はあくまで例示ですので,どのような事情があれば,「やむを得ない事情」として認められるのかについては,実際には裁判所が判断することとなります。